犬の去勢・避妊手術をしないとどうなる?最適な時期やメリット・デメリット、手術後の注意点とは?
前書き
犬を飼い始めると、健康管理やしつけの一環として「去勢」や「避妊」手術について考えるタイミングがやってきます。けれども、「手術をしないと問題があるの?」「いつ受けさせるのがベスト?」「本当に必要?」と悩む飼い主さんも多いのではないでしょうか。
本記事では、犬の避妊・去勢手術の必要性やリスク、最適な手術時期、手術のメリット・デメリット、そして手術後の注意点まで詳しく解説します。愛犬のためにも、飼い主として正しい知識を持ち、適切な判断を下せるよう、このガイドをぜひ参考にしてください。
去勢・避妊手術をしないとどうなる?
避妊・去勢手術は、犬の生殖機能を取り除く手術で、繁殖を防ぐ以外にも多くの目的があります。手術をしない場合、以下のようなリスクや問題が生じることがあります。
1. 望まない繁殖の問題
オス犬とメス犬が一緒に暮らしている場合、避妊・去勢をしていないと、意図しない妊娠が発生する可能性があります。計画的に子犬を育てる環境でなければ、飼い主にとって大きな負担になることも。
日本国内ではまだ多くの犬が殺処分されており、その背景には計画性のない繁殖が一因としてあります。去勢・避妊手術を行うことは、こうした不幸な犬を増やさないためにも重要な社会的責任と言えるでしょう。
2. 健康面、ホルモン由来の病気
去勢・避妊手術を行わない場合、犬はさまざまな健康リスクに直面します。
避妊していないメス犬は、子宮蓄膿症(子宮内に膿がたまる病気)や乳腺腫瘍(乳がん)などの病気のリスクが高くなります。特に最初の発情前に手術を受けていないメス犬ではリスクが高いことが研究で明らかになっています。
オス犬も前立腺肥大や会陰ヘルニア、精巣腫瘍などの疾患にかかる可能性があります。また、肛門周囲腺腫(肛門周囲にできる腫瘍)の発症率も高まります。これらの病気は高齢になるほど発症しやすくなるため、長期的な健康管理の観点からも手術の有無が重要になってきます。
3. 発情期のストレスや問題行動
手術を受けていない犬は、ホルモンの影響により特定の行動特性が強く現れる傾向があります。
オス犬では、マーキング(尿で縄張りを示す行為)が増えたり、他の犬に対して攻撃的になったり、脱走しようとする傾向が強まります。また、発情期のメス犬を求めて遠くまで移動しようとする本能的な行動も見られます。
メス犬の場合、半年に一度程度の頻度で発情期を迎えます。この期間中は、出血が見られたり、性格が普段と変わったりすることがあります。また、発情期のメス犬の匂いは遠くまで届くため、近所のオス犬を引き寄せてしまう可能性があり、望まない交配のリスクも高まります。
去勢・避妊の最適な時期はいつ?
一般的な推奨時期:
去勢・避妊手術の最適な時期は、犬の性別や犬種、サイズによって異なります。一般的には、メス犬では最初の発情前(生後6ヶ月前後)に手術を行うことが推奨されています。この時期に手術を行うことで、乳腺腫瘍のリスクを大幅に減らすことができます。
小型犬・中型犬:
生後6ヶ月〜1歳頃
小型犬は比較的早く成長が完了するため、生後6ヶ月前後での手術が問題ないケースがほとんどです。この時期は体がある程度成長し、全身麻酔にも耐えられる年齢であり、かつホルモンの影響が出る前に手術を行うことができるため、最も一般的です。
大型犬:
生後9-15ヶ月程度まで待つことが推奨されることもあります。
大型犬や超大型犬は成長が遅く、骨や関節の発達に性ホルモンが重要な役割を果たしているため、手術時期を遅らせる方が良いです。
大型犬は成長に時間がかかるため、関節や筋肉の発達を妨げないよう、タイミングに配慮が必要です。
※ただし、動物病院によって見解が異なるため、かかりつけの獣医師とよく相談しましょう。
去勢・避妊のメリット
1. 健康上で病気の予防
去勢・避妊手術には多くの健康上のメリットがあります。メス犬では、子宮蓄膿症の予防が最も大きな利点です。この病気は未避妊のメス犬で非常に高い確率で発生し、命に関わることも少なくありません。また、乳腺腫瘍のリスクも大幅に減少します。特に最初の発情前に手術を受けたメス犬では、乳腺腫瘍の発生率が0.5%以下まで下がるとの研究結果があります。
オス犬では、精巣腫瘍や前立腺疾患、肛門周囲腺腫のリスクが減少します。また、会陰ヘルニア(骨盤底筋の弱化によるヘルニア)の予防にもなります。これらの病気はいずれも高齢になってから発症しやすく、治療が困難なケースも少なくないため、予防的な観点からも手術は有効です。
2.発情期のトラブル回避
手術により、ホルモンに関連する多くの問題行動が改善される可能性があります。オス犬では、マーキング行為、他の犬への攻撃性、脱走傾向などが減少します。メス犬では、発情期に伴う行動変化(落ち着きがなくなる、出血による管理の手間など)がなくなります。
ただし、手術ですべての問題行動が解決するわけではありません。しつけやトレーニングは依然として必要です。また、すでに習慣化してしまった行動は手術後も続く可能性があるため、早めの手術が推奨されます。
3. 社会的なメリット
去勢・避妊手術を行うことは、飼い主個人だけでなく社会全体にもメリットがあります。望まない繁殖を防ぐことで、殺処分される犬の数を減らすことができます。また、発情期特有の問題行動が減ることで、近所トラブルを防ぎ、公共の場でも他の犬や人と円滑に交流できる機会が増えます。
さらに、手術済みの犬は多くの犬連れ可施設やドッグランなどで受け入れられやすい傾向があります。ペット可の賃貸住宅でも、手術済みであることが入居条件となっているケースも少なくありません。
去勢・避妊のデメリットとリスク
1. 手術に伴うリスク
去勢・避妊手術は一般的な処置ではありますが、全身麻酔を必要とする外科手術であるため、一定のリスクが伴います。麻酔に対する反応や合併症の可能性はゼロではありません。ただし、現代の獣医療では術前の血液検査や健康診断が徹底されており、リスクは最小限に抑えられています。
2. 太りやすくなる
去勢・避妊手術には多くのメリットがある一方で、いくつかの長期的な健康への影響も報告されています。特に大型犬では、成長期早期に手術を行うことで、骨や関節の発達に影響を与え、股関節形成不全や十字靭帯断裂のリスクが高まる可能性があるとされています。
また、手術を受けた犬は甲状腺機能低下症や肥満になりやすい傾向があります。ホルモンのバランスが変化し、代謝が落ちるため、太りやすくなる傾向があります。食事管理と運動が今まで以上に大切になります。
3.費用面の負担
去勢・避妊手術には一定の費用がかかります。相場は動物病院や地域によって異なりますが、一般的にメス犬の方がオス犬よりも高額になる傾向があります(メス犬3万~6万円程度、オス犬2万~4万円程度)。これはメス犬の手術の方が手技的に複雑で時間がかかるためです。
去勢・避妊手術に関するよくある誤解
「去勢すると性格が変わる」という誤解がありますが、手術で根本的な性格が変わることはありません。ホルモンに関連する特定の行動が減ることはありますが、基本的な性格や、既に学習した行動は維持されます。
「メス犬は一度は子犬を産ませた方が健康に良い」というのも科学的根拠のない俗説です。逆に出産経験があるメス犬でも、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍のリスクは避妊手術を受けていない限り変わりません。

- 1台8役多機能ペット掃除機
- 自宅でサロン級ペットグローミング
- 動作音なし0騒音
- 3L超大容量ダストボックス搭載
手術後の注意点
1. 傷口の管理
傷口を舐めたり引っかいたりしないよう、エリザベスカラーや術後服の着用が推奨されます。赤く腫れたり、出血がある場合はすぐに病院へ。
2. 安静に過ごす
手術後1〜2週間は激しい運動を避け、なるべく静かに過ごさせましょう。散歩も短めで、様子を見ながら行います。
3. 食事量の調整
術後は食欲が増す子も多く、必要以上に食べさせると体重が増加しやすくなります。低カロリーなフードや体重管理用の食事への切り替えも検討しましょう。
まとめ
去勢・避妊手術は、愛犬の健康と安心した生活を守るための重要な選択肢の一つです。手術をするかどうか、またその時期については、それぞれの犬の性格や生活環境、飼い主さんの考え方によって異なる部分もあります。
しかし、正しい情報をもとに判断し、かかりつけの獣医師としっかり相談することで、後悔のない決断ができるでしょう。大切な家族の一員として、犬が健康で幸せに暮らしていくためのサポートをしてあげましょう。
関連記事:
春の花粉症対策!愛犬・愛猫のための毛並みケアと洗浄習慣のいろいろ